クシムが大変なことになっています。
9月10日に2020年10月期のQ3決算があったのですが、それと同時にライツ・オファリングをぶちかましてきました。
ライツ・オファリングは、私は過去にADワークスで食らっており、その時は何も知識が無く訳がわからなかったのですが、今はある程度わかるようになったので、ちょっと今回の事象と今後について考察してみたいと思います。
クシムが行うライツ・オファリングの概要
まずはクシムが行うライツ・オファリングの概要についてです。
おおざっぱにポイントをまとめるとこんな感じでしょうか。
- 2020年10月21日の株主総会で承認(第1号議案:発行可能株式数増の定款変更、第2号議案:ライツ・オファリング)を得ることがライツ・オファリング実施の条件(否認されれば実施しない)
- 条件決定日である2020年10月27日の終値が1,400円(当該IR前日の終値)を割っていた場合は、その終値を2で割った価格、1,400円以上の場合は700円が新株予約権の行使価額となる
- 2020年10月31日時点の株主に対して、普通株式1株につき1個の新株予約権が無償割り当て
- 行使価額を払い込むことにより、新株予約権1個⇒普通株式1株が交付される
- 新株予約権は2020年11月2日~東証に上場、2020年12月4日に上場廃止予定(それまでに行使されなかった新株予約権は失効)
- 新株予約権の行使期間は2020年11月2日~12月9日(証券会社が取次業務を行う実務上の制約により実際には12月8日まで)
まずは株主総会での承認が必要だということですね。
このライツ・オファリングですが、もしも既存株主がみんな金持ちで、みんなが新株予約権行使できる資金余裕があったら誰も困らないんですよね。
既存株主は無償で割り当てられた新株予約権を時価の半額で行使して、保有枚数が倍になる。
クシムは行使された総額が手元に入って今後の成長ドライバーになる。
というwin-win関係。
しかし現実はそうならないですよね。
それぞれのプレーヤーの思惑を考えてみたいと思います。
当該スキームで生じ得る事態
ここから先は、ライツ・オファリングが10月21日の株主総会で承認される前提で、その後どのような動きになるかを考察していきたいと思います。
このスキームの特徴的なところは、新株予約権を市場で売買できるというところだと思います。
市場で新株予約権を買う人物の中には、新たに長期株主となり得る者もいるでしょうし、短期売買で利ザヤを狙う者もいるでしょう。
ここでは次の5つのプレーヤーを想定して、それぞれの立場からの動きを考察してみます。
(他にも考えられるでしょうが、今後の株価形成に主に影響を及ぼす人たちを挙げています)
①クシム
②10月31日時点株主(新株予約権行使しない)
③10月31日時点株主(新株予約権行使する)
④新株予約権購入者(行使後即売却)
⑤新株予約権購入者(行使後保有)
①クシム
まずは①クシムですが、クシムとしては新株予約権を行使してもらって、資金を得たいわけです。
それが次の成長ドライバーになるわけですから、行使してもらわないことには意味がない。
となるとクシムが気にするのは10月27日(条件決定日)の終値ですね。
10月27日の終値が1,400円を割っていた場合には、行使価額が700円よりも下がってしまいます。
それが何を示すかというと、ライツ・オファリングにより割り当てられた新株予約権の行使によって得られる資金の上限額が下がってしまうことを意味しています。
ほぼ無いでしょうが、仮に割り当てられた新株予約権が100%行使された場合にクシムに入る総額は、行使価額×発行される新株予約権総数になります。
行使価額が700円から下がってしまうと、クシムが得られる資金が減ってしまいます。
そのため、10月27日までにクシムとしては行使価額算出の根拠となる株価をなるべく上げておきたいという思惑が働くと思われます。
そして、11月2日~12月9日(実務上は8日)の行使期間には、なるべく行使してもらいたいと思うはずです。
ただし、その思惑がどのようなアウトプットをもたらすのかはわかりません。
②10月31日時点株主(新株予約権行使しない)
次に10月31日時点の株主で新株予約権を行使しない人です。
新株予約権を行使するには行使価額の払い込みが必要になりますが、その資金が無い人も多くいるはずです。
そんな人たちはこのカテゴリーです。
この人たちは、新株予約権が市場に上場すると、無償で割り当てられた新株予約権を売りに出すでしょう。
当たり前ですよね、行使できないのだったらそのまま持っていても価値は0ですが、市場で売れば値がつきますから。
③10月31日時点株主(新株予約権行使する)
10月31日時点の株主かつ新株予約権を行使する人もいます。
これからのクシムの成長を期待する人で、なおかつ資金にも余裕がある人たちは、新株予約権を行使するでしょう。
行使価額は直近の株価の半額なので、安く買い増しが出来て良かったと思うんじゃないでしょうか。
④新株予約権購入者(行使後即売却)
新株予約権が市場に流れることで、新株予約権を購入⇒行使⇒交付された株を即売却、で利ザヤを稼ごうとする人も出てくるでしょう。
この人たちが実質的には行使を促進するプレーヤーになるのかもしれません。
新株予約権の上場予定期間は:11月2日~12月3日、新株予約権の行使期間は11月2日~12月9日(実務上は8日)なので、【新株予約権調達価格】<【クシム株売却価格】-【行使価額】が成り立つトレードができれば、利ザヤが稼げます。
このプレーヤーはクシム株の売り圧を高めますので、クシムの既存株主にとっては厄介な存在となります。
しかし、そのおかげで新株予約権の行使が進むので、資金調達の観点からは重要な役割を果たすとも言えます。
⑤新株予約権購入者(行使後保有)
新株予約権を市場で購入する人の中には、行使してそのまま交付されたクシム株を保有し続ける株主も現れると思います。
クシムが言うところの、「新たな投資家層の開拓」です。
このプレーヤーは、クシムにとっても既存株主にとっても有難い存在になることでしょう。
逆に言うと、クシムにとってはこのカテゴリーの人たちをどれだけ増やせるかが鍵になるでしょうね。
クシムが将来的に投資に値する魅力的な企業であるとみなされれば、この属性の人たちは増えると思います。
カイカのライツ・オファリング後の値動き
クシムと仲が良いカイカが、最近全く同じやり方のライツ・オファリングを行っていますので、そちらの値動きを見ていきましょう。
※2020年9月13日17:13グラフのデータ参照ミスがあったので修正しました。
上は、カイカ株終値、新株予約権の行使価額(A)、新株予約権終値(B)、A+B、をグラフ化したものです。
カイカがライツを公表したのは6月18日です。
前日終値である32円の半値16円が行使価額に仮決定しました。
※カイカは8/7に1株⇒1.36株の株式分割を行っているので、上のグラフにおいては、8/7以前の数字は調整後終値を使っています。
その後、値動きはありましたが、行使価額決定日である8/5の終値は37円であり、32円を超えたため、行使価額は16円に決定しました。
8月12日から新株予約権の上場及び行使期間が開始されると、カイカ株の株価は下落。
先の例であげた④のプレーヤーがカイカ株の売り圧となっている様子がわかります。
黄色の線と青の線の差分が④にとっての利ザヤとなります。(2020年10月9日18:07修正。修正版はこちらの記事をご覧ください)
※実際には手数料が発生するので利ザヤはもっと小さくなると思われます
さいごに
今日はクシムのライツ・オファリング及び参考としてカイカのライツ・オファリング後の値動きを見ていきました。
クシムの場合、ライツ発表と同時に公表されたQ3決算がイマイチな印象だったということもあり公表の翌日S安をつけました。
業績は詳しく見てみる必要がありますが、今後も伸びるのであれば妙味はあるかもしれませんね。
気になる点としては、クシムの公表資料の中で、発行済み株式総数について、「2020年8月31日時点で4,004,600株」とありました。
一方で、今回臨時株主総会で議題にあがる定款変更では、「発行可能株式数が5,083,200株から16,000,000株」とされています。
今回ライツでは既存株主に1株に1個の新株予約権を配るだけなので、それであればこんなに発行可能株式数を増やす必要ないんですよね。
もしかして今後も・・・?
ここの真意が知りたいところです。
今回のライツでしばらくはマネーゲームが続くと思われますので、安易に飛び込むのは危険だと思われます。
しかし、クシムの今後に期待がもてるのであれば、余裕資金で参加するのはありかもしれませんね。
私は様子見てチャンスがあれば参加するかもです。
コメント
[…] […]
[…] […]