ここのところあげあげ相場になってしまって、持ち株についてもやることないし、書くこともないので、手の空いた時間で色んな銘柄の決算レビューでも始めてみようかと思います。
決算を読むと会社のことがより良く理解できるし、そのような決算を読む力を身に着けておくことは今後の投資生活にとっても力になると思うんですよね。
なので、自己研鑽の一環としてこれから空いた時間があれば、しばしば決算レビューを挙げていきたいと思います。
第一弾となる今日は、有名どころということで、先日のソフトバンク株式会社(9434)の2021.3期日Q1決算のレビューをしていきたいと思います。
ソフトバンクグループにおけるソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社(9434)は言わずもがなソフトバンクグループの一員ですが、いまやソフトバンクグループは巨大になりすぎて組織全容がよくわからなくなってしまったので、まずは位置づけを整理しておきます。
ソフトバンク株式会社(9434)の親会社は、ソフトバンクグループ株式会社で、株式の保有比率は67.13%とのことです。
当社の親会社であるソフトバンクグループ㈱は、当連結会計年度末において、当社発行済株式総数の67.13%をソフトバンクグループジャパン㈱を介して実質保有しています。
ソフトバンク株式会社 第34期 有価証券報告書より引用
https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/ir/documents/security_reports/pdf/sbkk_fy2019_security_reports.pdf
そして、ソフトバンク株式会社(9434)の下には、ヤフーを運営するzホールディングスがいて、zホールディングスの下にはヤフー株式会社やアスクル株式会社、そして昨年連結子会社化した株式会社zozoがいます。
改めてみるとものすごいグループですね・・・。
下に昨年度の有価証券報告書の「関係各社の状況」から一部を抜粋したものを引っ張ってきました。
(関係会社が多すぎて全てを載せるのはあきらめました)
これをみると各社の関係がわかりやすいと思います。
後で説明するプレゼン資料の中では、ソフトバンク株式会社のセグメントは「コンシューマ」「法人」「流通」「ヤフー」「その他」で説明されていますが、それぞれをどの会社が担っているのかがよくわかります。
ここで注目しておきたいのは関連会社に含まれているPayPay株式会社ですね。
ソフトバンク株式会社はPayPay株式会社の株を直接25%保有しており、連結子会社のzホールディングス株式会社も25%を保有しているので、間接保有も合わせると50%という保有割合となっています。
PayPay事業は後で出てきますがソフトバンク株式会社の成長エンジンとなる事業に位置付けられているので、その存在価値は今後ますます高まっていくことと思います。
プレゼン資料
さてソフトバンク株式会社の位置づけがわかったところで決算資料を見ていきます。
ソフトバンク株式会社の決算資料はとても充実していて、「決算短信」のほかにも「プレゼンテーション資料」と「データセット」がついています。
この資料の充実ぶりからしても、株主に対してより自社のことを理解してもらおう、という姿勢が表れていますよね。
その中でも「プレゼンテーション資料」は、まさにソフトバンク側が利害関係者に訴えたい内容が凝縮したものだと思うので、これを見ると「企業がどこを見てほしいか(裏を返せばどこを見てほしくないか)」がわかるものとなっています。
そういう観点を踏まえて、まずはプレゼン資料を見ていきたいと思います。
プレゼン資料は前段として会社のデジタルシフトの状況が書かれていて、コロナ禍においても臨機に対応をしている様子が紹介されています。
そしてその後に続くのが上記のQ1決算の概要です。
話は「増収継続」→「ヤフー・法人事業が増収」→「4%増益」→「ヤフー・法人事業が増益に貢献」→調整後フリーキャッシュフローの話を挟んで→「純利は横ばい」→「計画に対して順調に進捗」といった流れになっています。
まずこの一連を通して感じるのは、「非常にシンプルでわかりやすい」こと。
ここだけを読んで、「増収増益」「ヤフー・法人事業が好調」といった前情報が入ってきます。
純利益のスライドについては、「昨年の一過性要因を除くと横ばい」と押し切るところもさすがです。
一過性要因を除いた数字で計算すると、マイナス1.8%となるのですが、それを明示しないことでマイナスイメージを抱かせないように工夫がされています。
プレゼンとは何たるかがよく凝縮されていると感じます。
このあとは事業別概況に続くのですが、ここでも「プラスの結果は数字で見せる」「マイナスの結果は数字では見せない」の法則が発動しています。
それがよくわかるのが、こちらのグラフ。
「物販等」も含めて計算すると昨年比マイナス5%となるのですが、サービス売上の部分だけ青囲いにして「サービス売上は前年並み維持」という表現で提供しています。
このグラフを見て「この嘘つき」と思う必要は全く無くて、このコロナ禍において物販等が減少するのは当たり前のことです。
なので、その部分に起因するマイナスをことさら表現するよりも、「サービス部分は順調ですよ」と訴えた方が、利害関係者に自社の状況を理解してもらうには得策なわけです。
そういった意味でもさすがだなと思ってしまいます。
こんな調子で、「昨年比プラスのところは具体的な数字でアピール」「昨年比マイナスの数字はアピールしない」というシンプルなテクニックで、読んだ人の視点を自らが訴えたい内容にフォーカスさせるような工夫がQ1業績を説明するパート全編に渡って続いています。
そしてその後に続くのは今後の成長戦略に関する内容です。
成長戦略に関しては、次のスライドで4つ挙げられています。
当然のことですが4つの戦略は並列ではなく(建前的には並列かもしれませんが)、最も優先順位が高いものが先に挙げられているわけです。
その一丁目一番地の対策がPayPayです。
PayPayについては、スライド枚数をさいて今後の展望について説明されています。
PayPayをプラットフォームに、金融サービス・モバイル・eコマースの分野にてシナジーを追求するという内容になっています。
PayPayは大規模なキャッシュバックキャンペーンの効果もあってなのか、ユーザー数が3,000万人に到達しているとのことです。
スマホが生活を支えるインフラの一つとなっている現代において、スマホ決済アプリの市場の勝者になることは、非常に大きいです。
上のスライドでもわかるように、ソフトバンク株式会社の構想としては、PayPayをハブとして他のサービスを連携することで、強力なシナジー効果を発揮するということを意図しているようです。
私もPayPayをはじめとしたスマホ決済を利用していますが、とても便利なサービスです。
スマホ決済は心理的抵抗が低いので、スマホ決済での経済圏に自社サービスを組み合わせて囲い込みができれば、安定した顧客基盤を構築できることでしょう。
既にPayPayは頭一つ抜けている気がしますが、まだ楽天等の他社も諦めてはいないようなので、ここの勝者になれるかどうかがソフトバンクの今後の要だと思います。
(追伸.記事を書いていたら長くなってしまったので、データシートの分析もしようと思ってましたが、辞めました。)
おわりに
今日はソフトバンク株式会社の決算をレビューしてみました。
ソフトバンクグループは会社の関係が複雑すぎて今までよくわかっていませんでしたが、今回勉強したことを通して何となく姿が見えてきました。
決算資料を読むことの大切さをまた一つ実感できました。
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