今日は主力投資先であるスカラの事業に具体的な動きがあったので、それについてまとめます。
スカラについてはこのブログでも度々取り扱ってきて、企業の全体像について下の記事でまとめていました。
今回動きがあったのは、上の記事中にある社会問題解決型事業のうち、地方創生に関するものですね。
2つの大きな動きは、愛媛県デジタル総合戦略におけるDX推進基盤「エールラボえひめ」の開発と、「逆プロポ」サービスの第二弾です。
それぞれについて、以下でレビューしていきます。
「エールラボえひめ」の開発
「エールラボえひめ」開発の前段の動きとしては、愛媛県におけるデジタル総合戦略の策定がありました。
2020年6月に愛媛県が発注したデジタル総合戦略策定業務を、同年8月にPublic dots & Company社(PdC社)が受託しています。
※↓愛媛県の入札ページを埋め込んでいたのですがリンク先が消えてしまったので、PdC社のページに変更しました(2021年4月20日)
なお、PdC社とスカラは、2020年9月に業務提携を行っています。
それについては、下の記事にまとめています。
PdC社は、愛媛県から受託したデジタル総合戦略策定業務を遂行し、愛媛県は2020年11月に下記のデジタル総合戦略の骨子案を公表しています。
この骨子案のp.5に、「行政のDX」「暮らしのDX」「産業のDX」の三本の柱と、それらDXの取組推進基盤として、「官民共創デジタルプラットフォーム」の存在が記述されています。
この「官民共創デジタルプラットフォーム」が具体化したものが、今回の「エールラボえひめ」という位置付けだと思われます。
市区町村ではなく、いきなり県レベルの自治体でのプラットフォーム開発ということで、一足飛びなのが個人的には驚きでした。
PdC社は、創業者に議員経験者がいたり、日本初の議員オンラインサロンを運営していたりと、自治体との繋がりが強い会社です。
PdC社とスカラの出会いについて、PdC社代表取締役の伊藤さんがnote記事を書いていたので、以下にシェアさせて頂きます。
この記事によると、伊藤さんがCXによる行政サービスの質向上に関する記事を書いたのが2020年3月で、それに以下のコメントをつけてFBに投稿したそうです。
”公民連携事業で、サービスを設計する上でCXをどうするか、は数年後には重要なテーマになってると思う。日本はまだ、ここの認知に至ってないのだけど、その時にはうちのような会社と、アプリやウェブサービス開発する会社が一緒にサービスを設計すると、いいものが作れると思う”
伊藤さんのnote記事 https://note.com/hirotaka_ito_pdc/n/ne1d5fdf6e89d より引用
これに反応したのが、スカラの伊佐治さんだということでした。
つまり、スカラとPdC社の出会いからわずかに半年で業務提携、そして1年で愛媛県での官民共創プラットフォームローンチまでこぎつけてしまったというわけです。
自治体のことをよく知っているPdC社と、PdC社が持っていない技術である「アプリやウェブサービス開発」の技術を保有するスカラがお互いの強みを活かして開発したのが「エールラボえひめ」であり、後述する「逆プロポサービス」ということです。
スカラ社のフットワークの軽さが良くわかるエピソードではないかなと思います。
今回、ローンチされるプラットフォームが、どのような使われ方をしていくのか、まだ全容はつかめませんので過度な期待は禁物ですが、下の日経記事を見る限り、県下の市町と一体で進めていくようなので、愛媛県全域を巻き込んだプロジェクトとなりそうです。
そして、この「エールラボえひめ」における注目ポイントは、基盤技術の一つとしてスカラグループの一つであるスカラパートナーズと資本業務提携を結んでいるxID社が提供するデジタルIDサービス「xID」が使われていることです。
xIDは、マイナンバーカードを用いて不可逆的に生成される唯一のデジタルIDを使ったサービスですが、このデジタルIDを用いることで、オンライン上でも本人性が担保されるため行政手続きをスムーズに行える等のメリットが考えられます。
「エールラボえひめ」は骨子にもある通り「官民共創プラットフォーム」ですので、行政だけではなく、今後は民間企業も巻き込んでプロジェクトが進められることと思います。
民間企業でもxIDの採用が増えれば、官民のサービスをxIDを介してスムーズに連携するCXが高いサービスが提供できるのではないかと思われます。
「エールラボえひめ」は、4月1日に正式にオープンするようなので、4月以降にこのプラットフォーム上でどのような動きがあるのか注目していきたいと思います。
「逆公募プロポ」サービスの第二弾公表
もう一つの動きは、こちらもスカラとPdC社が共創した逆プロポサービスの第二弾です。
第一弾であるイーデザイン損保の案件は下記のリリースをご参照ください。
第一弾プロジェクトでは、企業のCSR的な色味が強かったのですが、今回の第二弾はアイデアソンの先の実証実験まで想定した内容で、より実務に近接したものになっています。
逆プロポが誕生した理由の一つに、公共の課題を解決できる可能性がある技術を持つ事業者が公共の課題とマッチングできない現状が挙げられていました。
今回のプロジェクトはまさにその課題を解決する手法として画期的なものだと思います。
アイデアソンの中で、公共の課題とワイヤレスゲートの持つ技術とのマッチングを図り、その後の実証実験においてサービスを具体化するまでが描かれています。
自治体というのは自発的に新しいことを始めるのが非常に難しい組織なんですよね。
自分たちで行政の課題はわかっているものの、それを解決するためには民間のアイディア・技術力が必要になるし、それを得るためには予算をつけて発注しなければならない、というのが従来の行政だと思います。
発注するにも、ある程度具体化しなければならないので、アイディアがない状況で具体化してしまってもまったく的外れな発注になってしまう可能性すらあります。
逆プロポであれば、お金を負担するのは企業側なので行政は予算手当てが不要です。
しかも課題を共有すれば、民間事業者がアイディアをくれるという内容で、行政側にとっては渡りに船といったサービスかと思います。
一方で、事業者側にとっても、自分たちの持つ技術がどのような公共の課題を解決できる可能性があるのか、つまりは今後公共部門で稼ぐ領域がどこにあるのかを探るために必要な先行投資だと考えれば、十分にメリットがあります。
PdC社代表取締役の伊藤さんが、逆プロポサービスについて「コロンブスの卵」と表現されていましたが、今回の第二弾を見て、その発言が腑に落ちました。
おそらく行政の仕事を取りたいという事業者を中心に、今後も逆プロポサービス自体の引き合いがあるのではないでしょうか。
スカラは逆公募プロポでマッチングが成立すると手数料収入が入るほか、事業者と自治体の間にPMとして入ることで、スカラ自身にも自治体との営業上の接点ができるというメリットがあります。
既に第三弾、第四弾の予告もされているので、今後どのようなプロジェクトが立ち上がってくるのか、楽しみに待ちたいと思います。
おわりに
今回は、スカラと業務提携をしているPdC社の具体化された2つのプロジェクトについて書きました。
PdC社は、行政の課題を解決を目指すスカラにとって、非常に有力なパートナーなのではないかと個人的には思います。
また、サービス開発のスピード感を見る限り、非常に良好な関係が築けているのではないでしょうか。
愛媛県での今後の展開や逆プロポサービスの今後の展開について、今後公表されていく情報を楽しみに待ちたいと思います。
コメント
[…] 先日記事にしたとおり、逆プロポや自治体における官民共創プラットフォームの具体的な動きも出てきたので、これらがどう業績に結び付いていくのか、これからが楽しみです。 […]